前回に引き続き今回も肩甲骨のお話です。
肩甲上腕リズムについてはご存知かと思います。肩甲上腕関節(肩関節)の動きに合わせて、肩甲胸郭関節も可動するというものです。たとえば、肩関節を外転する場合、30°までは肩甲胸郭関節の動きはほとんどありませんが、30°以上90°までは肩関節2°外転するのに対して肩甲胸郭関節が1°上方回旋し、90°からは肩関節1°に対して肩甲胸郭関節が1°動きます。この肩甲上腕リズムが崩れると肩関節に負担がかかり、傷害へと結びつきます。
静止姿勢における肩甲骨のアライメントを調べたとき、肩関節が外転していないのにも関わらず、肩甲胸郭関節が上方回旋しているヒトが見受けられます。この場合もまた、傷害へと繋がってしまいますから、修正する必要があります。
肩甲骨が上方回旋する場合、上方・下方回旋させる筋が互いに筋発揮を行い、均衡をとりながら、より筋出力が高い方へ動きが起こることになります。肩甲骨が上方回旋の状態にあるということは、上方回旋させる筋(僧帽筋、前鋸筋)が短縮位で拘縮し、下方回旋させる筋(菱形筋、小胸筋)が伸張位で拘縮している可能性があります。そのため、これらの筋に拘縮がみられる場合は、その可動性を取り戻すことが第一優先となります。
拘縮を取除いてもそのアライメントに変化がないときは、下方回旋させる筋の活動レベルが低いことが予想されます。その場合は、以下のエクササイズを行うことで修正することが可能です。
Pull-in
① 立位で肩関節30°以上の状態で軽いチューブを持つ
② 肩甲骨を下方回旋させる意識をもちながら、肩関節を内転する
③ 10~15レップ繰り返す
実施後、肩甲骨のアライメントをチェックしてみて下さい。変化があると思います。傷害予防の観点からも、パフォーマンスの向上の観点からも、肩甲骨の位置の修正は必要です。非常に短時間で簡単に修正できますから、ウォーミングアップに組み込んでおくと良いでしょう。
森永製菓株式会社ウイダートレーニングラボ
牧野講平